私は、無批判な自然賛美は好きではない。普段、都会で不自由のない生活をしながら、一時、田舎を訪れただけで「自然を大切にしよう」と言うことには、ためらいを感じる。その意味では、私が北海道で体験した然別湖のナイトウォッチングも、十勝川のラフティングも、実際の自然の厳しさからはほど遠い、表面だけの自然観光だったかもしれない。しかし、そのどちらの体験も、自然とは、人間とは、を私に考え直させるには十分だった。
ナイトウォッチングでは、ホテル以外に人工物は何もない湖の周辺で、その光さえ届かない山奥に行き、「光も音もない暗闇の世界」を知る。ラフティングでは、雨で水量と速度を増した十勝川で、強大な川の流れと格闘し、「自然の力が支配する世界」を知る。私は「人間は小さい」ということを再び確認した。
文明から離れ、自然の中に身を置くと、人間は「余分なものに囲まれて生きている」ということがわかる。見栄や虚栄心、常識や社会通念、「もともと無かったものに振り回されて生きている」ということがわかる。もちろん、文明を捨てて自然の中で暮らそう、と言っているのではない。人間社会の多くのものは、「もともとは無かったもの」ということを、私たちは知っている必要があるということだ。
広大な空、広大な川と向き合うと、人一人の悩みなんて無いに等しいものだと感じるだろう。現代人の過剰な悩みは、目の前の文明社会や人間関係が、世の中の全てだと思うことから始まっている。
「自分の存在なんて小さいものだ」そういう正しい認識があれば、存在の小ささを気に病み、自分の存在を確かめるために他人を犠牲にする、といった無理解な行為もなくなる。「勘違いするな。きみの存在なんてちっぽけなものだ。」自然は率直にそう言ってくれる。それが自然の役目だ。今回、私はそう感じたのである。
私にとって北海道は、人と自然についてもう一度考えさせられた、意味のある場所だった。あなたにとっての北海道はどうだっただろうか。
以上。
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